コロナ禍の強制巣ごもりから、家のことを色々考えるようになり、新築やリフォームするために多くの人々がまずはYouTubeを見るようになり、そこで多くのこれまで知らなかった知識を得られるようになりました。
30年以上このギョーカイにいて、それこそずっと高気密高断熱の重要性を説いてきましたが、中々一般のところまでは届かず、どうしたものかと停滞をしてたところに神風の様に吹いたこの状況。
それはそれでわたしとしてはとにかく喜ばしいことで、松尾和也さんや今泉泰爾さん等々多くの建築系ユーチューバーが多くの教えを超分かりやすく解説されて、一般の方がとにかく高気密高断熱に関心をもち、更に認識を深めてもらうようになったのです。
HEAT20の素晴らしい功績
HEAT20なんてユーチューバーが説明してくれなければ一生日の目を見ることもなかったかもしれません。
そして、ほぼ全員が「G2」グレードが最低基準であると言い切ってくれました。
まずもって、HEAT20がなぜ素晴らしいかと言いますと、G1,G2,G3という断熱性能区分を『体感温度』で区分したことが最大の功績なんです。
なんで、体感温度区分が素晴らしいか?
これまでは断熱材の種類とか工法とか独自の主義主張からめいめい我田引水の喧伝合戦で終わっていたところに、そういった個別議論でなく、室温+室内平均表面温度÷2の体感温度で区別して、要はどんな断熱材や工法を使ってもいいからUA(外皮平均熱貫流率)値の差によってどれくらいの体感温度になるかを明確に区分したところにあります。
これだと特定の声のデカイとこだけが目立つのではなく、淡々と高性能な家づくりをやっているところにも公平な判断をもってもらうことに大きく繋がったわけです。
そこでG2グレードが最低基準となった
もちろん公にG2が義務化になったとかそういうことでなく、専門家たちの大多数が最低G2ぐらいの断熱レベルは必要であると説いているだけです。
G2グレードとは、全国を北から南まで、1から8までのエリアわけをして無暖房の状態で体感温度が13℃を下回らないレベルとされました。
因みにG1が10℃、G3は15℃。
G2の13℃というのも一見寒い感じはしますが、この条件も極力日射取得がない状態でのシミュレーションで、本来太平洋側で、日射がしっかり入るような立地・パッシブデザインであれば13℃以上にはなりますので、わたしのこれまでのデータ考察で言えば15℃以上には必ずなっているのでやはり最低がG2が妥当だと思います。
6地域のG2はUA値0.46w/㎡Kに非ず!6地域でも0.34w/㎡K!!
HEAT20大好き人間ですが、6地域以南に関してのG2区分がUA値0.46w/㎡Kに関しては大反対です。
まずわたしが住んでいる佐野市も昔は5地域だったのが6地域に格上げ?になってしまいました。
冬に外の水栓が凍ったり、明け方の温度はマイナスなのに何故に6地域なんだと。
これには日中気温が高くなるので1日の平均にするとそのプラスが大きく加算されマイナスを凌駕する平均気温となってしまうのです。
でも、その明け方が寒くてヒートショックを誘発して冬季死亡率ワースト1位を達成させてしまっている。
つまり、やはり、5地域の断熱性能にしないと全然弱い、足りないってことになってしまいますよね。
新築においては付加断熱をしないとまずはダメで、0.46は付加断熱しなくても達成できてしまいます。
それでは弱いンです。
そもそも高気密高断熱とは?
高い断熱と高い気密を施された家のことを言います^^
高断熱にするための断熱材選びは何がいい?
まず結論。
究極の断熱材はありません!
グラスウールや、押し出し法ポリスチレンフォームやウレタンフォームやフェノールフォームなどなどがありますがどれも一長一短あるから、それぞれの特性を鑑みた、つくり手の判断に委ねるしかありません。
予算が青天井ならもちろん条件は変わりますが、まずそんな人はいない^^
となると、限られた予算の中に何をどうするか?
しかも断熱材だけでなく家には柱や屋根や基礎や住設もあります。
トータルのバランスを鑑みてプロは仕様を考えます。
自分が信じたつくり手がグラスウールを基本仕様としているならそれを信じるのみなのです。
高断熱と言うくらいだから断熱材の熱伝導率(λ値:小さければ小さい程断熱性能が高い)の限りなく小さいものをぶ厚くすればするほど高い熱抵抗値(R値:高ければ高い程断熱性能が高い)となり、それが高断熱の壁や屋根の層をつくるわけです。
断熱パネル工法においても究極はありません。
何度も言うように断熱材に究極がないからです。
高断熱は施工も大事
断熱材も良いのを使ったから高断熱になるのではなく、しっかりとした施工を伴わなくては宝の持ち腐れです。
究極の断熱材があったとしても、施工がダメならそれは高断熱とは言えないですよね。
現場発泡吹付断熱は、、、
断熱材に究極はないからどれも一長一短と言いましたが「新築」においては現場発泡吹付断熱材はNGと言わざるを得ません。
最大のNGは解体した時に構造材と分離できないからです。
分離ができれば、木材なら再利用やできないならチップやバイオマスに利用できます。
しかし、家全体を吹き付けるので家全体が産廃扱いになってしまいます。
そうなると処分費は通常の5倍以上。
自分のお子さんに家をゆずるときに財産が大きな負債と化してしまうわけです。
個人的にもマイナスですし、この再利用できない大きな産廃は社会の大きな負債とも言えるのです。
一般的にはウレタンは湿気を通さないと言われていますが、それは工場で生産された”独立気泡”があるものだけで、現場発泡は独立気泡をつくれないので、湿気を通さないから防湿フィルムが不要とはならないのです。
でも、それを知らず(知ってて?)防湿フィルムを張らないものだから、内部結露を起こして結露水が電線に伝わりコンセントの穴から緑色の水が出るという現象が多く起こっています。
気密も簡単に取れるので安直にそれをやりたい気持ちは分かりますが上記のことを分かっているつくり手は絶対「新築」においてはやらないのです。
「新築」と限定しているのは既築の場合特に床下を断熱する場合は施工的にどうしても吹付がBestの場合もあるので新築限定としました。
もちろん、既築でも止む無しの場合のみ吹付で、本来はやらないにこしたことはないですよね。
気密も高気密で
左の資料が一番わかりやすく気密の重要性をまとめてくれています。
まずもって絶対わかっていただきたいことは高断熱住宅は高気密でないとダメ!です。
単なる言葉の組み合わせではなく、高気密高断熱はこれで1つの言葉であって、中気密高断熱とか低気密中断熱みたいな言葉はつくれるかもしれませんが、工法としてはあってはならないと覚えてください。
①漏気による熱負担を軽減
気密が悪くて外から冷たい空気が家の中に入って来てしまっては折角壁屋根で断熱してても防ぎようがありませんし、折角暖めた空気をすきまからバンバン逃がしてしまってはいつまで経ってもあったまりませんよね。
風呂の栓を抜いたままお湯をいれてもいつまで経っても溜まらないのと同じです。
②断熱材の断熱効果を補充
グラスウールや羊毛やセルロースもか。
こういう繊維系の断熱材は繊維の中にある「静止空気」が集まって断熱してくれるのです。
何もグラスウールの繊維が断熱してくれるわけではないんです。
となると、気密が悪くて壁や屋根の断熱層に空気が侵入して動くと静止空気が破壊されます。
静止空気が破壊されてしまうと断熱効果も当然落ちてしまうわけです。
調湿系の断熱材だから防湿気密フィルムを張らないつくり手も結構いますが、調湿系であろうがそもそもは断熱材であるので、静止空気を破壊させてしまっては高断熱とは言えないですよね。
だから中気密高断熱なんて工法は無いと言ってるのです。
③繊維系断熱材では防湿も兼ねる
②の箇所と重複しますが、内部結露防止のためその手前にしっかり水蒸気を止める層=防湿層が必要です。
その為に透湿抵抗の高いフィルムを張ることは同時に気密も取れるということになります。
気密が悪いと言うことは防湿も悪くなって、内部に水蒸気が侵入してしまうと、壁が冷やされた時に結露を起こし、それが元で特にグラスウールは組織が破壊されるおそれがあります。
それに、水蒸気で濡れるということは、断熱性能も落ちることになります。
水は熱伝導率が高いのですぐに熱を伝えてしまいます。
熱いフライパンを握る時、ミトンの布で握らないと熱くて握れませんよね。
そのミトンは乾いているから握れるのであって、濡れているとすぐに熱が伝わるので熱くてフライパンを持てないのです。
ここでも高気密でないと高断熱にならないことが分かります。
④計画換気の前提条件の一つ
最後もやはり高気密でないと計画換気が実現できない。
「計画」とは予め決めた順路で換気をするようにするわけですが、気密が悪いと家中のどこからか勝手に空気が入って来て、どこからか勝手に出ていってしまいます。
折角高い換気システムを入れても、計画ができないからカタログ通りの効力は得られないですよね。
絵の様に掃除機のホースが穴が開いていたら、折角吸っても吸いきれないからゴミも取れない(空気を移動することができない)ですよね。
気密を高めているからこそ、計画的に換気もできるわけです。
特に全熱交換型の換気システムを採用しているところなら、本来水蒸気も交換して調湿をしなくてはならないところに、外から勝手に水蒸気が侵入してきては、換気システムだけでは交換しきれません。
じゃ、第3種の換気システムだから気密は関係ないとはならないのは言うまでもありませんね。
C値(隙間相当面積)が気密の通知表
高気密かどうかってどうやって調べるか?
それは気密測定をやってC値を計ります。
その数字が小さければ小さい程、家に穴が少ない=高気密となるわけです。
故に、まずは気密測定を全棟していないと数値が分かりません。
では、C値はどれくらいから高気密と言えるのか?
わたしは0.5㎠/㎡以下からと考えています。
理由としては、気密シートやテープで処理をしていても、家の経年変化で徐々に数値は落ちるからです。
竣工から解体まで同じ気密性能を保つと言うことはあり得ません。
であれば、よりゼロに近ければ近い程良いということになりますが、これまたゼロは限りなく不可能。
となると、最低0.5は切っておかないといかんだろうなぁと。
気密が悪くて良いことは何一つ無い!と覚えておきましょう。
新築は高気密高断熱でないといけない理由
①寒い家はヒートショックの一因になる
②暑い家は熱中症になる
③上がり続ける光熱費を最小限に抑えるため
④温室効果ガスを最小限に抑えるため
①、②は当然のことながら③の上がり続ける光熱費に対しては我々は無力です。
エネルギー自給率10%ちょいの我が国にいる以上、この先もずっと外国からエネルギーをわけてもらわないと生きていけないまさに”エネルギー赤ちゃん”の国に住んでいるのです。
そして、ご存じの通り今戦争で世界的にエネルギー供給が不安定というより、石油を中心に持てる国に完全にコントロールされていて、我々はその支配下に抗うことは日本にいる以上一生できません。
そして化石燃料は有限です。使えば使うほどなくなるので、希少価値はドンドン上がっていきます。
例えばレギュラーガソリン10年前はLいくらでした?
そして、その値段にこれからなると思いますか?
そう、これからも上がる一方なのです。
絶対そうなる未来に対して我々ができることはとにかくエネルギーを一滴でも使わないようにすることなのです。
そう考えると、わざわざ白紙からつくれる新築でお金がもったいないからと言って、ソコソコの性能で高気密高断熱の家をつくらないということは、将来に対して毎日光熱費高騰に戦々恐々と生きていかねばなりません。
そんなことがわかっていればおのずと高気密高断熱は絶対に必要だと言うことが分かります。
ということで、長々と綴って参りましたが今や我が国は900万戸の空き家がある空き家大国です。
基本的には空き家をリフォームすれば向こう10年間新築する必要のない国です。
そんな中、わざわざつくる家は尊いものでなくてはなりません。
刻一刻と温暖化している地球に無駄な温室効果ガスをこれ以上出してはいけないはずです。
賢明な判断をお願いするばかりです。
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